ZARA × John Galliano、ついに発売。ガリアーノがZARAをどう「Re{form}」したのか
「9月発売」と発表されてから、世界中のファッションファンが待ち続けていた、ZARAとJohn Galliano(ジョン・ガリアーノ)のコラボレーション。
「一体、9月のいつ発売されるの?」
世界中でそんな声も聞かれていましたが、ついにその日がやってきました。
2026年10月1日、ZARA × John Galliano「Re{form}」が発売。
世界的なファッションブランドZARAと、Christian DiorやMaison Margielaなどで数々の伝説的なクリエーションを生み出してきたJohn Galliano。この組み合わせだけでも十分に話題性があります。でも、今回私が注目したのは、単なる「有名デザイナーとZARAのコラボレーション」ということではありません。
「Re{form}」という、その制作方法そのものです。
そしてもう一つ。筆者はロンドンのCentral Saint Martinsでファッションを学んだ経験があり、現在はパリを拠点に、日本企業のフランス進出や店舗展開などをサポートしています。
だからこそ今回は、一人のGallianoファンとして、そしてフランス市場を見ているコンサルタントとして、このコラボレーションを少し違った角度から見てみたいと思います。
「Re{form}」とは? 新しい服をゼロから作ったわけではない
今回のコレクションの名前は、
Re{form} Zara Authored by the Couturier John Galliano
です。
「Re{form}」という名前が示すように、今回GallianoはZARAのために、ゼロから新しい服をデザインしたわけではありません。
ZARAがこれまで作ってきた既存の服やストックを出発点にしています。
Galliano自身も、ZARAの「archives」を見ていたと語りながら、実際には「stocks」と呼ぶ方が近いと説明しています。
つまり、そこにあった服を、彼自身のクリエーションのためのプロトタイプとして使ったのです。
ウールのコート、スリップドレス、コットンシャツなど。一見すると、ごく普通のZARAのベーシックな服。ところが、そこからGallianoの仕事が始まります。
服をパーツに分解し、
「この形をどう変えられるだろう?」
「このパーツを別の場所に持っていったら?」
「この服を全く違うボリュームにしたら?」
と考えていく。
そして、元の服とはまったく違うシルエットへと変えていきます。
Gallianoの面白さは「服を解体すること」だけではない
ここは、今回のコレクションを理解するうえで、とても重要なところだと思います。
「既存の服を解体して再構築する」
と聞くと、最近のアップサイクルやリメイクファッションを思い浮かべる方も多いかもしれません。
でも、Gallianoの場合は、もっと根本的なところにあります。彼がCentral Saint Martinsで学んでいた頃から、衣服をそのままの形で扱うのではなく、裏返す。前後を変える。パーツを移動する。異なる服の要素を組み合わせる。ボリュームを変える。そして、服が持っている「意味」や「文脈」まで変えてしまう、そうした実験を続けてきました。
1984年のCentral Saint Martinsの卒業コレクション「Les Incroyables」は、フランス革命後の世界をテーマにしたもので、Gallianoのキャリアの出発点として知られています。その後の彼の仕事を見ても、衣服を単なる「身体を覆うもの」としてではなく、変形させることのできる素材、そして物語を語るための媒体として扱ってきたことが分かります。
だから、今回のZARAでも、「コートの丈を少し短くしました」というような単純な話ではありません。例えば、今回のコレクションでは、コートのポケットを大きく後方へ移動させたり、襟を伸ばしたり、前身頃を変化させたりすることで、身体と服との関係そのものを変えています。
また、一枚のシャツを3XL、4XLほどまで拡大し、別のシルエットへと変換するなど、元の服からは想像できない形へと展開しています。まるで、服のパーツをパズルのように動かしながら、新しい形と新しい物語を作っていく。
私はGallianoを、そんな意味で「服のマジシャン」のようなデザイナーだと感じています。
本人が今回の制作について、ハッカーやDJのように「サンプリングして、リミックスする」と表現しているのも、とても彼らしい言葉です。
「普通の服」に、一気に物語が生まれる
そして、今回のコレクションを見ていて面白いのが、元はZARAのベーシックな服だった
ということです。シャツ、コート、ドレス、テーラリング・・・
私たちが普段のワードローブとして着ることのできるアイテムが、Gallianoの手にかかると、まったく違う表情を見せる。そこには、彼がこれまで培ってきた歴史的な引用や、演劇的なシルエット、レイヤリング、トロンプルイユ、そして少し挑発的なユーモアが加わっています。だから、今回のコレクションは、「全身Gallianoで着こなす」だけが楽しみ方ではないと思います。むしろ、
いつものベーシックな服に、Gallianoらしいアイテムを一つ加える。それだけでも、スタイル全体が変わる。そういう楽しみ方もできるコレクションだと思います。
メンズもかなり面白い。女性が着たくなるアイテムも
今回、私が個人的に面白いと思ったのがメンズのアイテムです。テーラリングやコートなど、男性向けとして提案されているものの中にも、「これ、女性が着たら絶対に面白い」
と思うものがかなりあります。
逆に、女性向けのアイテムを男性が取り入れることもできる。今回のコレクションでは、性別によって服を完全に分けるというよりも、一つのワードローブをどう自分らしく組み合わせるかという楽しさが感じられます。これもまた、Gallianoらしい「既存の文脈を少しずらす」感覚なのかもしれません。
そして、ここにもGallianoの原点が見える
今回のコレクションを見ていると、私はどうしても彼のCentral Saint Martins時代を思い出します。1984年の卒業コレクション「Les Incroyables」。フランス革命後のパリに登場した、誇張されたファッションを楽しむ若者たちをテーマにしたコレクションです。Gallianoのフランス革命への関心は、その後の長いキャリアにも繰り返し登場しています。私自身もCentral Saint Martinsでファッションデザインを学んだので、Gallianoのクリエーションを見ていると、「服をデザインする」ということについて、学生時代に学んだことを思い出します。服をきれいに作る。もちろん、それもデザインです。でもCentral Saint Martinsで触れるデザインには、「そもそも、この服はなぜこの形なのか?」と問い直す様なところがあります。
服を一度バラしてみる。
違う場所に置いてみる。
身体との関係を変えてみる。
そして、そこから今まで見たことのない形を作る。
Gallianoが長年やってきたことの一つも、まさにそういうことなのだと思います。
なぜZARAは、John Gallianoと組んだのか?
ここからは、少しビジネスの視点から見てみたいと思います。私は普段、パリを拠点に、日本企業がフランスに進出する際の市場調査、ブランド展開、店舗・商業物件探し、現地でのビジネスサポートなどを行っています。
そのため、今回のコラボレーションを見たときに、どうしても気になったのが、
「なぜZARAは、今John Gallianoなのか?」
ということでした。
ZARAはすでに世界的なブランドです。だから、単に「有名デザイナーとコラボして話題を作る」というだけなら、そこまで珍しいことではありません。実際、ファストファッションや大規模アパレルブランドは、長年にわたってさまざまなデザイナーやクリエイターとのコラボレーションを行ってきました。
代表的なのがH&Mです。H&Mは2004年のKarl Lagerfeldとのコラボレーションを皮切りに、Stella McCartney、Comme des Garçons、Lanvin、Maison Martin Margiela、Alexander Wangなど、数多くの著名デザイナーとのコラボレーションを展開してきました。2014年のAlexander Wangコラボレーションは、H&Mのデザイナーコラボレーション10周年の節目としても紹介されています。
つまり、「誰もが買える価格帯のブランドが、ハイファッションのクリエイティブを取り入れる」という戦略は、すでに長い歴史があります。
ファストファッションは、「安い服」だけを売っているわけではない
ZARA、H&M、UNIQLO、GAPなど、世界的な大規模アパレルブランドは、単純に「安くて便利な服」を提供しているだけではありません。
ブランドとして、
どういうイメージを作るのか
誰と組むのか
どんな話題を作るのか
どんな顧客層にブランドを広げるのか
店舗でどんな体験を作るのか
オンラインでどう見せるのか
ということまで考えています。
特に今回のZARA × Gallianoは、「ZARAの民主的な価格帯」と「Gallianoの圧倒的なクリエイティビティ」を掛け合わせることで、これまでハイファッションに接点がなかった人にもGallianoの世界観を届けることができます。
一方でGallianoにとっても、自分のクリエーションをより多くの人に届ける新しい舞台になる。双方にとって意味のあるコラボレーションです。そして今回のパートナーシップは、1回限りではなく、2年間・4つのコレクションを予定しています。今回の「Re{form}」は、その第一章です。
フランスに出店すれば、自動的に売れるわけではない
そして、ここからは私自身の仕事につながる話です。
日本企業から、「フランスに出店したい」というご相談をいただくことがあります。
そのときに、最初にお伝えすることの一つが、「フランスに出店したからといって、自動的に売れるわけではありません」ということです。
日本で成功しているブランドでも、フランスにそのまま持ってきただけでは、同じように成功するとは限りません。ここには、少なくとも二つの大きなポイントがあります。
① 「出店すること」と「売れること」は別
フランスに店舗を作る。
商業物件を借りる。
内装を整える。
商品を並べる。
ここまでできても、それだけではビジネスは完成しません。
誰に売るのか。
その人は何を求めているのか。
価格は合っているのか。
競合と比べて何が違うのか。
どのエリアなら、そのブランドの価値が伝わるのか。
そこまで考えて、初めて「出店」が「ビジネス」になります。
② 日本でうまくいった方法を、そのまま持ってきても機能しないことがある
これも非常に多いケースです。
「日本ではこの方法で成功しました」
「アメリカでも同じ方法で展開しました」
もちろん、それは大切な実績です。
でも、フランスでは、また別の市場です。フランス人と日本人では、商品の見方も、接客に対する期待も、価格に対する感覚も、ブランドのストーリーの受け取り方も違います。さらに面白いのは、フランスの中でもターゲットによって変わること。そして、国が変われば、同じブランドでも見せ方を変える必要があります。
だから私は、海外進出を考えるとき、「日本の成功モデルをどうフランスにコピーするか」
ではなく、「日本で培った強みを残しながら、フランス市場ではどう再構築するか」という視点を大切にしています。
私がフランス進出でお手伝いしていること
AllofranceJPでは、日本企業・ブランドのフランス進出に関して、必要な部分だけを切り出すのではなく、状況に応じて伴走型でサポートしています。
例えば、
市場調査・競合調査
フランス市場での競合、価格帯、ターゲット、ブランドのポジショニングなどを調査します。
ブランド・店舗展開のご相談
日本でのブランドの強みを、フランス市場でどう見せていくかを一緒に考えます。
商業物件・オフィス・ショールーム探し
店舗だけでなく、ショールーム、事務所、ポップアップスペースなど、フランスでのビジネス拠点探しもサポートしています。
現地でのアポイント・商談・通訳
フランス企業との商談や展示会、現地でのコミュニケーションをサポートします。
フランスでファッション関係の仕事をしたい方のご相談
企業としての進出だけでなく、ファッション業界でフランスに挑戦したい方からのご相談にも対応しています。「何から始めたらいいのかわからない」という段階でも構いません。
マーケティングのように「売り方」を最適化するのではなく、「どういうブランドとして認識されるか」を設計します。
特に、
「フランスでブランドを展開したい・パリ基準に引き上げたい・海外で通用するブランドを作りたい!」
という方には、現地のリアルな視点から具体的な改善提案が可能です。
■ サービスメニュー・料金
● スポットコンサル(60分)
● ブランド診断+改善提案(レポート付)
● 継続コンサル(月額)
※初回はスポットコンサルからのご相談が多いです。
※内容・規模に応じてカスタマイズ可能です。
まずはお気軽にご相談ください。初回はヒアリングベースで状況を整理いたします。
ZARA × Gallianoから見える、「ブランドを海外で育てる」ということ
今回のZARA × John Gallianoを見て、改めて感じたのは、
ブランドは、商品だけでは作られない
ということです。
誰と組むのか。
どんなストーリーを作るのか。
どの市場で、誰に届けるのか。
どんな価格で提供するのか。
そして、そのブランドをどのように見せるのか。
すべてがつながっています。
ZARAは、Gallianoというファッション史に残るクリエイターと組むことで、既存の服に新しい文脈を与えました。Gallianoは、ZARAの既存商品を素材として、もう一度服の可能性を広げました。
「すでにあるものを、別の視点から見る。」
今回のRe{form}には、そんな面白さがあります。
そしてそれは、海外進出にも少し似ているのかもしれません。
日本ですでに持っている商品、技術、ブランドの強み。
それをそのまま海外に持っていくのではなく、
その市場ではどう見せるのか。どう伝えるのか。誰に届けるのか。どんな場所に置くのか。
そこから、新しい価値を作っていく。
それが、海外でブランドを育てるということなのだと思います。
ZARA × John Galliano、これからの「Re{form}」にも注目
2026年10月1日に発売された、最初の「Re{form}」。既存のZARAの服を解体し、パーツを動かし、ボリュームを変え、別の文脈を与える。そこには、1984年のCentral Saint Martins時代から続くGallianoのクリエイティブなDNAが、確かに息づいています。そして、これを世界中の人がアクセスできるZARAという舞台で行う。
だからこそ、今回のコラボレーションは面白い。私はGallianoのクリエーションのファンであり、同じCentral Saint Martinsでファッションデザインを学んだ一人として、そしてパリで日本企業のフランス進出をサポートする立場として、これからの「Re{form}」も楽しみに追いかけていきたいと思います。
次のコレクションでは、GallianoはZARAをどう変えるのでしょうか。これから2年間、4つのコレクションを通して見えてくるものにも、注目したいと思います。
⭐︎筆者について
Allofrancejp 代表 萩野アリサ
イギリス留学後、就職を機にパリへ移住。現在はパリを拠点に、日本企業のフランス進出サポートや展示会同行、駐在員の住居探し・生活セットアップなど、現地サポートサービスを提供しています。→会社概要は、こちらから。











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